2024年5月~6月 スペイン北部+イタリア南部+フィンランド
リオハ州のログロ―ニョから高速バスで約2時間、険しい山岳地帯を貫くトンネルをいくつも通り抜けて、バスク州のビルバオ(Bilbao)にやってきました。
バスク地方は、スペインの他のエリアとは気候も言葉も文化も違います。
かつてはバスク地方の独立を目指す過激派によるテロが頻発していた時期もありましたが、20年ほど前から、サン・セバスチャンが美食の街として注目されるようになり、今ではすっかり人気の旅行先になりました。
私が初めてバスク地方を訪れたのは16年前(2004年)のこと。サン・セバスチャンに滞在して、バル巡りを大いに楽しみました。あまりに楽しかったので、2010年にも再び訪れています。
ビルバオの町は、2004年にサン・セバスチャンからカンタブリア州へバスで移動した際に通り過ぎたことがあるので、町の雰囲気はなんとなくわかってはいたのですが、滞在して観光をするのは今回が初めてです。
グッゲンハイム美術館
ビルバオで一番の見どころは、やはりグッゲンハイム美術館(Museo Guggenheim Bilbao)でしょう。
写真で見たことはありましたが、実際に訪れると、想像をはるかに超える建築デザインの美しさと迫力に圧倒されます。
建物そのものが芸術作品ですね。
グッゲンハイム美術館は、館内に入らなくても楽しめるパブリックアートもあります。
特に人気なのが、美術館の入口の前に聳え立っている「パピー(Puppy)」。花の苗を埋め込んで作られた巨大な子犬の像なのですが。。。
がーん、運悪く、花の苗の植え替え時期にあたってしまいました。残念。。。
そして、もう一つ、パピーと共に人気なのが、「ママン(Maman)」という巨大な蜘蛛のオブジェです。
この蜘蛛のオブジェの近くには、ネルビオン川に架けられた橋状の遊歩道が設置されているのですが、実は、この橋状の遊歩道自体が「霧の彫刻(Fog Sculpture)」という芸術作品で、時間になると、橋の下から霧が発生するんです。
こんな仕掛けがあるとは全く知らなかったのですが、ちょうどグッゲンハイム美術館に入場した時に、この霧が出てきたので、美術館内から発生した霧を眺めることができたんです。発生した霧がネルビオン川の水面を流れるように移動して、すごく幻想的でした。この「霧の彫刻」は、中谷芙二子さんという日本人の芸術家の作品です。
パピー、ママン、霧の彫刻は、美術館の外にありますので、無料で誰でも見ることができます。霧の彫刻は毎時霧が発生するらしいので、是非霧が発生する時間に合わせて訪れることをおすすめします。
グッゲンハイム美術館の内部には、モダンアートの作品が多数展示されています。実は、私、モダンアートは苦手なものも多いのですが、せっかくビルバオまでやって来たので、入場して見学。
体験型の作品では、草間彌生さんの「無限の鏡の間(Infinity Mirrored Room)」が印象的でしたが、閉所恐怖症ぎみの私は、ちょっとパニックになりかけちゃいました。
グッゲンハイム美術館の入場チケットは、あらかじめオンラインでチケットを購入しておくと、並ぶことなくすぐに入場できるので便利ですよ。(購入時に日時の指定要。)
ネルビオン川を渡って旧市街へ
グッゲンハイム美術館を見学した後は、川沿いの遊歩道を歩いて、スビスリ橋(Puente de Zubizuri)へ。
スビスリ橋を渡り、ネルビオン川の北岸を歩いて、旧市街へ向かいました。
グッゲンハイム美術館から旧市街までは約2キロ。平坦な遊歩道が続くので歩きやすいです。
ビルバオの旧市街は、カスコ・ビエホ(Casco Viejo)と呼ばれます。
こぢんまりとした旧市街で、それほど見どころがあるわけではなのですが、ガラス張りの出窓がついた建物が並んでいて、なかなか趣があります。
旧市街の大聖堂(Catedral de Santiago)は、正面よりも裏側の門(Puerta del Ángel)がとても美しかったです。
庶民的な雰囲気の旧市街の中で、ひときわエレガントな雰囲気を醸し出しているのが、ヌエバ広場(Plaza Nueva)です。
ヌエバ広場には、広場を囲むように、タパスバーやレストランがずらりと並んでいます。
ビルバオの新市街
ビルバオは、バスク地方で最も大きな町。ネルビオン川の南岸に広がる新市街には、近代的なビルが並び、メトロ(地下鉄)も走る都会です。
16年前にビルバオの町を通り過ぎた時は、あまり魅力的な町には見えなかったのですが、実際に歩いてみると、バスク地方の他の町にはない、都会ならではの面白さがあります。新市街の中心ともいえるモユア広場(Plaza de Moyua)から伸びるグラン・ビア通り(Gran Vía de Don Diego López de Haro)には壮麗な建物も多く、とてもエレガント。
プラタナスの並木が美しく、お洒落なブティックが並び、ぶらぶらと散策するのが楽しい通りです。
今回ビルバオでは、新市街にある Hotel Ercilla de Bilbao というホテルに泊まりました。
建物自体は結構古いのではないかと思うのですが、とてもスタイリッシュに改装されていて、なかなか素敵なホテルです。
何といっても、ロケーションが最高に便利で、新市街の中心モユア広場まで徒歩5分、グッゲンハイム美術館までは徒歩約10分です。旧市街へは徒歩だと20分ほどかかりますが、ホテルのすぐ近くにあるインダウチュ駅(Indauxtu)からメトロを使えば、旧市街までたった3駅。ホテルの周辺には美味しいタパスバーやレストランもたくさんありますので、食べ歩きにも便利です。
とても良いホテルだと思ったのですが、いくつか問題がありました。まずは、滞在中WiFiがほとんど繋がらなかったこと。スペインで購入したプリペイドSIMを使っていたので、携帯からテザリングしてなんとかしのぎましたが、滞在した3日間、ずーっとこの状態だったので、かなり不便でした。
そして、もうひとつは、客室内の冷蔵庫が、庫内に用意されている飲み物を動かしただけで自動課金されてしまうシステムで、自分で買った飲み物や食べ物を冷蔵庫に入れることができなかったこと。日本でも昔はこういう冷蔵庫、よく見かけましたよね。旅行中、毎食外食っていうのは結構つらいんです。なので、スーパーで野菜や果物などを買って、それで済ます日も多いのですが、そんな時、冷蔵庫が使えないのは本当に不便です。
この2点さえなければ、文句なしのホテルだったのに。。。 残念です。
ビルバオの美味しい店
バスク地方は、食事が美味しいことで有名です。ビルバオ滞在中に訪れた中で気に入ったレストランやタパスバーをご紹介します。
La Viña del Ensanche(新市街) → ウェブサイトはこちら
このお店は、ピンチョスをつまみながら飲むカウンター(立ち飲み)の他に、テーブル席もあって、注文してから調理してくれるタパスのメニューが豊富なことが魅力。
調理が必要なタパスは遅めの時間にならないと出してくれないバルがビルバオは多いのですが、このお店は正午過ぎに訪れた時に、調理が必要なタパスを注文することができました。
昔ながらの雰囲気があって、活気もあり、おすすめです。
El Globo(新市街) → ウェブサイトはこちら
店内は、カウンターに並ぶピンチョスをつまみながら飲むカウンター席のみ。(ハイチェアーもあるけれど、混んでるので椅子を確保するのは難しい。)
どれにしようかな~とカウンターに並ぶピンチョスを品定めしていたら、隣にいた地元のお兄さんが「これ!」と指さして教えてくれたのが、蟹のグラタン。
このお店は、グラタン系のピンチョスが売りなので、もうひとつ、イカ墨のグラタンも頼んでみましたが、やっぱり地元の方に勧められた蟹のグラタンのほうが美味しかったです。
お店を出てから気づいたのですが、屋外には、着席してタパスを注文することができるテラス席もありました。ピンチョスの質も良かったので、ピンチョス以外のお料理もトライしてみたかったです。
Los Fueros(旧市街) → お店のウェブサイトはこちら
こちらは、タパスや一品料理などをメニューからアラカルトで注文することができるレストラン。(コース料理もあります。)
お店のスタッフの方もとても感じが良かったし、お料理もとても美味しかったし、ビルバオで訪れた店の中では、このお店が一番気に入りました。
デザートに Cocoa Dorayaky stuffed with drunken strawberries っていうのがあったので、「えっ、Dorayaky って、ひょっとしてどら焼きのこと?」と思って注文してみたら、こんなのが出てきました。
確かに、形はどら焼きみたいなんだけど、まったくの別物で、鉄製の容器で焼いたチョコレートフォンダンです。底には、リキュールで煮込んだ苺が入っていて、これ、めちゃうまでした!!
Gure Toki(旧市街) → お店のウェブサイトはこちら
旧市街にあるとても有名なタパスバー。
有名なお店なので、ピンチョスだけじゃなくて、調理してくれるタパスも頼みたいな~と思っていたのですが、訪れた時間帯(お昼の12時半ごろ)はまだ調理ができないと言われたので、結局ピンチョスだけを注文することになりました。
評判通り、他のお店に比べると、ピンチョスの創作性が高いですね。
とても美味しいんですけどね、ピンチョスは、作り置きなので、温めて出してくれはしますが、揚げ物もそれほどカリッとしてないし、ちょっと残念なところはあります。
同じものを作りたてで食べることができたら、もっと美味しいのになあ~って思っちゃうのよね。ピンチョスだけじゃなくてタパスも注文できる遅めの時間に訪れるべきでした。
ビルバオへのアクセス
ビルバオはバスク地方でもっとも大きな町なので、スペインの多くの町から、バスや鉄道を使ってアクセスすることができます。また、空港もあり、マドリードやバルセロナからだけでなく、欧州の主要都市から飛行機で直接ビルバオに入ることも可能です。
長距離バスは、ビルバオの新市街にある Bilbao Intermodal というバスターミナル発着です。バスターミナルの地下にはタクシー乗り場があるので、バスで到着後、簡単にタクシーを利用できます。
マドリードやバルセロナからはRENFE(スペイン国鉄)が高速鉄道を運行していて、新市街のビルバオ・アバンド駅(Bilbao-Aband)に到着します。一方、バスク地方の町を結ぶバスク鉄道(Euskotren)の列車は、旧市街のカスコ・ビエホ駅(Casco Viejo)発着です。
ビルバオは山岳地帯に囲まれているので、鉄道よりもバスのほうが短時間で移動できるケースも多いです。鉄道が通っているなら鉄道で、と思ってしまいがちですが、バス便の有無もチェックしてみましょう。例えば、私が今回移動したログロ―ニョ⇔ビルバオ間は、鉄道だと2時間45分、バスだと2時間。バスのほうが断然早いし、便数もバスのほうが多くて便利でした。また、ビルバオ⇔サン・セバスチャン間も、バスク鉄道を使うよりバス便のほうが短時間で便利です。
移動方法のオプションを調べるツールとしては、Rome2Rio というウェブサイトが大変便利です。Google Map の検索では出てこないようなローカルなバス路線の情報も出てきます。運行会社の名前やウェブサイトのリンクもあるので、そこから運行会社のウェブサイトに飛べば、詳しいタイムテーブルを調べたり、チケットを購入したりすることもできます。世界中の情報が網羅されているので、スペインだけでなく、世界を旅する時に、私はいつもこのウェブサイトを活用しています。
ビルバオを訪れて感じたこと
今回、バスク地方3回目にして、初めてビルバオに滞在してみましたが、私はやっぱり、バスク地方を訪れるなら、ビルバオよりもサン・セバスチャンをおすすめしたいです。個人的な好みにもよりますが、私がビルバオよりもサン・セバスチャンを推す理由をいくつか挙げてみたいと思います。
まず、サン・セバスチャンは、ラ・コンチャという美しい湾に面していて、景色が最高に美しいです。一方の、ビルバオは、ネルビオン川に面してはいますが、ネルビオン川自体はそれほど美しい川ではありません。ビルバオにはグッゲンハイム美術館という大きな見どころがありますが、サン・セバスチャンの景色の美しさにはかなわない、と私は感じました。
旧市街に関しては、サンセバスチャンもビルバオも、どちらもそれほど美しい旧市街ではありません。(スペインにはもっと美しい旧市街がたくさんあります。)でも、サンセバスチャンは、旧市街じゅうがバル街になっていて、独特の雰囲気と活気があるんです。観光客が多すぎるっていう面もあるかもしれませんが、賑やかな中でバルの梯子をするのが楽しいんですよね。
一方のビルバオは、サン・セバスチャンのように一か所にバルが密集しているのではなく、旧市街と新市街のあちこちにバルが点在しています。新市街のバルは比較的観光客は少なく、地元の人で賑わっているイメージです。
今回ビルバオでちょっと不便に感じたのが、ビルバオのバルの営業形態です。
ビルバオでは、ピンチョスを置いてないバルはないんじゃないかな?と思うぐらい、どのバルに行ってもカウンターにピンチョスが並んでます。ピンチョスが並んでいるバルでも、タパス(注文してから調理してくれるおつまみや小皿料理)も出している店は多いのですが、キッチンのサービスが始まる時間が結構遅いんですよね。なので、ピンチョスじゃなくてタパスが食べたいな~と思って訪れても、キッチンのサービスがまだ始まってなくて、結局ピンチョスを食べる羽目に。。。ということがビルバオでは何度かありました。
その点、サン・セバスチャンだと、ピンチョスを置いてないバル(注文してから調理してくれるタパスのみを出す店)も結構あるんですよね。私は、ピンチョスよりも、できたてのタパスのほうが基本的に好きなので、サン・セバスチャンのほうが店選びがしやすいと感じました。
まあ、そんなこんなで、私は、ビルバオよりも、サン・セバスチャン派です。
今回、ビルバオに滞在中には、ビルバオの町から少し足をのばして、ゲルニカとベルメオという2つの町も訪れました。続きは次回のブログで。。。
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