南イタリアのサレルノに滞在中、日帰りで、パエストゥム (Paestum) という町にある古代ギリシアの遺跡を訪れました。
イタリアに古代ギリシア遺跡があるの?と不思議に思われるかもしれませんが、古代ローマによってイタリア半島が統一される前の南イタリアには、古くからギリシア人が移り住み、数多くのギリシア人植民都市が形成されていました。そのため、イタリア半島南部からシチリア島にかけての地域は、マグナ・グラエキア(Magna Graecia = 大ギリシア)と呼ばれていたのです。
パエストゥム遺跡は、紀元前600年ごろに古代ギリシア人によって築かれた植民都市ポセイドニアの遺跡です。ポセイドニアは、紀元前273年にローマの支配下となり、現在のパエストゥム (Paestum)という名前で呼ばれるようになりました。遺跡内には、パエストゥムがポセイドニアと呼ばれていた時代に建てられた3つのギリシア神殿の他、ローマ支配下となった後に築かれたローマ劇場や祭祀場なども残っているため、「ギリシア・ローマ遺跡」としてユネスコの世界遺産に登録されています。
パエストゥム遺跡のあるパエストゥム (Paestum) へは、サレルノから普通列車で約30分です。
パエストゥムの駅を出ると、そこには、かつてパエストゥムの町を囲んでいたと思われる壁があるだけで、お店などは全く何もありません。
駅前から田舎道を15分ほど歩くと、パエストゥム遺跡に到着。
パエストゥム遺跡のメインゲートから遺跡内に入ると、すぐ目の前に、アテナ神殿と呼ばれるギリシア神殿が建っています。
アテナ神殿から南に向かって歩いていくと、ローマ時代に築かれたフォーラム(祭祀場)や、ローマ劇場などの遺構が残っており、
さらに南へ向かって歩いていくと、2つの大きなギリシア神殿が現れます。
手前にあるネプチューン神殿は、紀元前450ごろに建てられたもの。
周囲の円柱だけでなく、内部の柱なども残っていて、見事です。
ネプチューン神殿という名前がつけられていますが、もう1つの神殿と同様に、ギリシアの女神ヘラに捧げられた神殿ではないか、という説もあり、第二ヘラ神殿と呼ばれることもあります。
そして、ネプチューン神殿のすぐ隣に建っているのがバジリカと呼ばれる神殿です。
バジリカは、ネプチューン神殿よりも更に古く、紀元前550ごろに建てられたもの。こちらも、ギリシアの女神ヘラに捧げられた神殿だったと考えられており、第一ヘラ神殿という名前で呼ばれることもあります。
ローマ支配下において、ポセイドニアからパエストゥムと呼ばれるようになったこの町は、4世紀~7世紀頃にマラリアの蔓延などで衰退。中世になると町は放棄され、人々の記憶から忘れ去られてしまいました。
1760年代にはパエストゥム遺跡の存在が明らかになりましたが、実際に発掘が始まったのは1950年代のこと。現在までにパエストゥム遺跡として発掘されたエリアは、かつてのパエストゥムの町の約20%に過ぎません。
パエストゥム遺跡に隣接する考古博物館には、このエリアで発掘された様々な美術品が展示されています。
中でも有名なのが、Tumba del tuffatore (ダイバーの墓)という紀元前470年ごろのフレスコ画です。
このエリアでは、フレスコ画が施された墓が数多く発掘されており、ダイバーの墓の他にもユニークなフレスコ画がいくつも展示されていて、とても面白かったです。
パエストゥム遺跡は、ポンペイ遺跡ほど有名ではありませんが、遺跡として公開されているエリアがコンパクトにまとまっているので、ささっと観てまわることができるし、ギリシア神殿という視覚的なアピールも大きいので、歴史にあまり興味がない人にも楽しめる遺跡だと思います。
サレルノやナポリからの日帰りスポットとしておすすめですよ!
パエストゥム遺跡へのアクセス
サレルノから:鉄道で約30分。Paestum駅下車。
ナポリ中央駅から:鉄道で約1時間15分。Paestum駅下車。
遺跡へはPaestum駅から徒歩約10分。駅からまっすぐ東へ歩き、突き当りを右へ曲がると、左手に遺跡のメインゲートがある。遺跡への入場チケットは、メインゲート手前の博物館で購入する。遺跡の入場料金は考古博物館の入場料込みで、3月~11月が12ユーロ、12月~2月が6ユーロ(2019年9月現在)。
遺跡はクリスマスと1月1日以外は毎日オープンしていますが、考古博物館は毎週月曜日が休館日ですので、パエストゥムを訪れるなら月曜日以外に訪れるのがおすすめです。
遺跡および考古博物館の開園時間や休館日などの最新情報は、パエストゥム遺跡のウェブサイトをチェックしてください。
パエストゥムへの電車は本数が少ないので、Trenitaliaのウェブサイトであらかじめ時刻表をチェックしておくことをおすすめします。
コメント