バルト海沿岸に面した「エストニア」「ラトビア」「リトアニア」という3つの国は、総称して「バルト三国」と呼ばれます。
私は、2009年5月にエストニアの首都タリン (Tallinn) を、そして、2019年6月にラトビアの首都リガ (Riga) とリトアニアの首都ヴィリニュス (Vilnius) を訪れました。
実際に訪れるまでは、旧ソ連の国にありがちな冷たいイメージ(笑顔が見られないとか、サービス精神がないとか)を勝手に抱いていたのですが、タリン、リガ、ヴィリニュスという3つの町を実際に訪れてみると、人も親切だし、治安も良く観光もしやすいし、そして、街並みがとーっても美しい!
何よりも驚いたのが、タリン、リガ、ヴィリニュスという3つの町が、それぞれまったく異なった雰囲気を持っているということ。「バルト三国」とひとくくりにして語られることが多いですが、エストニア、ラトビア、リトアニアという3つの国は、実は、言葉も違うし、長い歴史の中で育まれてきた文化も違うんですね。
バルト三国へは、日本からフィンランドのヘルシンキ経由で入れば、アクセスも意外と簡単。1週間ぐらいの休暇で個性的な3つの国を周って楽しむことができるので、ヨーロッパの中でもかなりお勧めのデスティネーションです。
私が実際に訪れてみて感じた、タリン(エストニア)、リガ(ラトビア)、ヴィリニュス(リトアニア)の特徴や魅力、アクセスなどをまとめておきたいと思います。
バルト三国の歴史
下の表は、タリン(エストニア)、リガ(ラトビア)、ヴィリニュス(リトアニア)という3つの町を支配してきた国を、時系列にまとめたものです。実際には、こんなに単純ではないのですが、判りやすくするために、ざっくりとまとめてます。
タリン (エストニア) | リガ (ラトビア) | ヴィリニュス (リトアニア) | |
13C | デンマーク王国 ハンザ同盟都市 | ドイツ騎士団 ハンザ同盟都市 | リトアニア大公国 |
14C | ドイツ騎士団 | ↓ | ↓ |
15C | ↓ | ↓ | ↓ |
16C | スウェーデン王国 | ポーランド・ リトアニア共和国 | ポーランド・ リトアニア共和国 |
17C | ↓ | スウェーデン王国 | ↓ |
18C | ロシア帝国 | ロシア帝国 | ロシア帝国 |
19C | ↓ | ↓ | ↓ |
20C | 1918年エストニア独立 第二次世界大戦 ソ連の占拠 ナチスドイツの占拠 第二次世界大戦後 ソ連領 1991年エストニア独立 | 1918年ラトビア独立 第二次世界大戦 ソ連の占拠 ナチスドイツの占拠 第二次世界大戦後 ソ連領 1991年ラトビア独立 | 1920年リトアニア独立 第二次世界大戦 ソ連の占拠 ナチスドイツの占拠 第二次世界大戦後 ソ連領 1991年リトアニア独立 |
これを見ると、歴史的に、どの国の文化の影響を受けてきたのか、3つの町の違いが判ると思います。例えば、タリンとリガは、13世紀にハンザ同盟都市として発展したので、ドイツ風の建造物が多く残っているんですね。一方、ヴィリニュスは、ハンザ同盟の影響はまったく受けていません。また、ドイツやスウェーデンの影響を受けたタリンとリガには、ルター派の教会が多く見られますが、ポーランドとの結びつきが深かったヴィリニュスにはカトリックの教会が多いんですね。
ちなみに、上の表を見るとわかるように、18世紀以降は、タリン、リガ、ヴィリニュスともに、似たような歴史を辿っています。
18世紀にロシア帝国の支配下となり、ロシア革命で帝政ロシアが消滅し、ソビエト連邦が成立した時に、3国それぞれに独立。しかし、その後、第二次世界大戦でソ連とナチスドイツに占拠され、戦後は、ソ連に併合。ソ連が崩壊した1991年に再び独立を果たしました。
タリン (Tallinn) の魅力
エストニアの首都タリンの旧市街は、一言でいうと、「おとぎの国」。13世紀に築かれた城壁もしっかりと残っていて、旧市街の中に入ると、まるで、中世にタイムスリップをしたかのよう。
街角では、中世の衣装をまとった可愛い女の子が、アーモンドに砂糖とスパイスを絡めたお菓子を売ってたりしてね。
なんか、もう、絵本の中からそっくりそのまま抜け出てきたような町なんです。
ハンザ同盟都市だったので、北ドイツっぽい建物もあるのですが、全体的な町の印象としては、むしろドイツよりも東欧っぽい雰囲気があるように感じました。
私がタリンを訪れたのは、10年以上前のこと。フィンランドのヘルシンキからフェリーを使って日帰りで訪れたので、たった丸一日過ごしただけだったのですが、楽しかったなあ~。
タリンの旧市街は、こぢんまりとしているので、日帰りでも楽しめますが、一日であちこち見て回るのは、実際かなり忙しかったし、ゆっくりとお買い物をする時間もほとんどなかったので、やっぱり1泊はするべきだと思います。
タリンを訪れた頃はまだブログを始めていなかったので、タリンのブログ記事は残っていないのですが、過去記事 でタリンを訪れた時のことを少し語っていますので(→こちら)、興味がある方は読んでみてくださいね。
リガ (Riga) の魅力
ラトビアの首都リガは、貿易拠点として、そして、産業都市として、中世から近代まで、発展し続けてきた町。
中世にハンザ同盟都市として栄えたリガの旧市街には、北ドイツ風の街並みが広がり。。。
パステルカラーの建物も多くて、ちょっと北欧っぽい雰囲気もします。
ひょっとしたら、これは、スウェーデンに支配されていた時代の影響なのかもしれません。
18世紀にロシア帝国の支配下となったリガの町は、19世紀になると、ロシア帝国有数の産業都市として、大きく発展を遂げました。この時代のリガの雰囲気を味わうことができるのが、新市街にあるユーゲントシュティール建築群です。
第二次世界大戦の戦火による被害が大きかったリガでは、観光をしていても、戦時中のソ連やナチスドイツによる占領や、戦後の共産主義時代の爪痕を感じることもあり。。。
様々な時代の名残が残っていて、「歴史の流れ」を感じることができるのが、この町の魅力だと思いました。
ヴィリニュス (Vilnius) の魅力
リトアニアの首都ヴィリニュスの町の雰囲気は、タリンやリガとはまったく異なります。
これは、歴史的に、ハンザ同盟や北欧諸国の影響を受けなかったためだと思われます。宗教的にもカトリック教徒が多く、華美な装飾に覆われたロココ様式やバロック様式の教会も数多く見られます。
ヴィリニュスの旧市街は、タリンやリガの旧市街と比べるとかなり広いです。「観光名所」と言われるようなものは少ないのですが、落ち着いた雰囲気の街並みに素敵なカフェやレストランが並び、道行く人も美しくて、とにかくお洒落。センスの良いショップや、工房のような個性的なお店も点在していて、「ぶらぶら街歩き」が楽しい町。
また、かつて治安が悪く廃墟と化していた地域に、芸術家が移り住み、「ウジュピス共和国」というボヘミアンで個性的なエリアになっていたりして。。。
なんだか、ちょっと、私の住むメルボルンを思わせるようなところがあり、私の好みにぴったりとはまった町でした。
どの町がおススメ?
私が気に入った(楽しかった)町を、ランク付けすると。。。
- ヴィリニュス
- タリン
- リガ
という順番になります。
でも、これは、あくまで、私の好みということで。。。
私が最も気に入ったヴィリニュスは、いわゆる観光名所的なところは少ないので、つまらないと感じる人も多いと思います。
一方、タリンは、完璧な「おとぎの国」なので、誰が訪れても楽しめるだろうなあと思います。でも、私が訪れた10年前でさえも、かなり観光客が多かったので、観光地化しすぎてると感じる方もいるかもしれません。
リガは、「町を散策する楽しさ」という点では、ヴィリニュスやタリンに劣ると感じたのですが、私は、この町を訪れたことにより、「バルト三国が辿ってきた苦難の時代(第二次世界大戦~戦後の共産主義時代)についてもっと知りたい」という気持ちになったので、この町を訪れて良かったなとつくづく思います。
ということで、是非是非、3つの町を訪れてみてほしいな、と思います。
バルト三国へのアクセス
バルト三国を訪れるには、フィンランドのヘルシンキ経由がおすすめ。日本からは、フィンランド航空や日本航空が、ヘルシンキまでの直行便を運航しています。ヘルシンキ空港は比較的こぢんまりとした空港なので、乗り継ぎも楽ちんです。
タリン(エストニア)、リガ(ラトビア)、ヴィリニュス(リトアニア)という3つの町を周遊する場合は、ヘルシンキ→タリン→リガ→ヴィリニュス→ヘルシンキ という順番でまわるか、もしくは逆回りで、ヘルシンキ→ヴィリニュス→リガ→タリン→ヘルシンキ という順番でまわると良いでしょう。タリンだけなら、ヘルシンキから日帰りも可能です。
フィンランドとバルト3国は、シェンゲン協定加盟国なので、各国間の入出国もまるで国内移動のように楽ちんです。
ヘルシンキ ⇔ タリン
- フェリーで約2時間。もしくは、飛行機で約30分。
タリン ⇔ リガ
- 高速バスで約4時間半。もしくは、飛行機で約1時間。
リガ ⇔ ヴィリニュス
- 高速バスで約4時間。もしくは、飛行機で約1時間。
ヴィリニュス ⇔ ヘルシンキ
- 飛行機で約1時間15分。
コメント
バルト三国のまとめ、楽しく読ませて頂きました。 読後、バルト三国合計の面積と人口を、日本の北海道、オーストラリアのVictoria州、と比較してみたところ、概ね、
バルト三国: 175,000km2, 675万人、
北海道 : 82,400km2, 527万人
Victoria州 : 230,000km2, 571万人
と言うことですから、日本の人口密度は、北海道でさえ、バルト三国の約2倍、Victoria州の約3倍
という感じですね。 同時に、メルボルンが州都のVictoria州は、オーストラリアの中ではタスマニア州に次いで2番目に小さい州だと思っていましたが、それでもその面積は日本全体の6割以上、と言うことに改めて驚きました。
藤原さん、
わー、日本の人口密度って、やっぱり高いんですねえ。
ビクトリア州は、地図で見ると、とても小さく見えますよね!